離婚後の役割逆転と疑似成熟について

前回のブログでは、神戸親和女子大学大学院での講義の概要を綴りましたが、今日は、その中で、特に離婚後によく起きる現象としての「役割逆転と疑似成熟」について話してみたいと思います。

親が離婚のプロセスで傷つき、混乱し、本来の子どもを守り、育てる役割を果たせなくなると、子どもは3歳ぐらいの幼い子どもであっても、親を支えようとその成長を加速化させていきます。子どもの親を思う気持ちにはいつも強く心を打たれます。こうした現象を臨床心理学では、親の子ども化、子どもの親化、役割逆転、あるいは子どもの疑似成熟といった言葉で呼びます。

 子どもの疑似成熟とは、一見、大人っぽく見えるけれど、それは本当の成熟ではないということです。特徴としては年不相応に幼い部分と年不相応に大人びた部分とが同居し、年相応の部分が欠落した「もろい存在」である点です。こうした疑似成熟の状態で、自分の欲求を押し殺したまま、長期間にわたって親を支え続けることは、子どもにとってはあまりにも荷が重すぎて、その代償はあまりにも大きなものがあります。

こうした事態を避けるためには、早いうちに専門家のサポートを得て、親が自らの離婚体験、傷つき体験を見つめ、再適応を果たして、子どもをこうした重荷から解放していく必要があります。