離婚における役割逆転の特徴

前回は離婚後の役割逆転疑似成熟について述べました。

こうした親子逆転は、離婚に限らず、親がうつ病やその他の精神的疾患に罹患して親として機能できない場合にも生じてくる問題です。

しかし、離婚後に生じる親子逆転は、単に親が子どもに依存し、子どもが親の世話をし、精神的に支えるといった逆転だけではなくて、より複雑な役割を子どもが担うようになるということが離婚の研究では夙に指摘されています。

それは片親の不在から生じてくる問題です。つまり、親の離婚後に母(父)親と同居している男(女)の子であれば、母(父)親の恋人的役割、夫(妻)的役割をも果たしたり、離婚後の争いにおいて同盟を結び、共に闘う戦友の役割を果たしたり、親を抑うつや自我の崩壊から守る役割も果たすなど、無邪気な子ども時代を犠牲にして、そのエネルギーを全て親のために使わなければいけないのです。こうした役割が子どもにとっていかに過重な役割であるかが分かると思います。欧米では、この役割逆転が心理的虐待として位置づけられているのも納得できます。

その結果、支えてきた親が幸せになれば報われますが、いつまでも満たされず、子どもが払った犠牲にも気づかないような場合には、やがて子どもはそうした親に怒りを感じるようになり、突然に家庭内暴力や不登校、ひきこもり等の問題行動を起こして親をびっくりさせることになります。