愛着のネットワーク

古くは「母原病」、そして最近では「母という病」などといった本が広く読まれていますが、こうした本を読んでいますと、母子関係にのみひたする注目するその視点の単純さに落ち着かなくなってきます。

子どもは母との関係の中でのみ生きているわけではないわけです。母との関係、父との関係、きょうだいとの関係、祖父母との関係、叔父さん、伯母さんとの関係、あるいは友達との関係など多くの関係性のネットワークあるいは愛着関係のネットワークの中で生きているのが現実です。ですから母との関係が悪くても、それを補うだけの良い父子関係や祖父母との関係などがあれば子どもはうまく適応していけるわけです。

愛着理論でも昔はまず母と子どもとの間に愛着関係が築かれ(モノトロピー)、父親との愛着関係は遅れて築かれると言われていましたが、今では誕生と同時に子どもは着のネットワークの中で複数の愛着関係を築いていくと言われるようになりました。

誕生と同時に複数の愛着関係を築いてきた子どもが、たとえ親が不幸にして離婚したとしても、その愛着関係のネットワークを維持していけるような社会になることを私は心から願っています。