今日は、C子(7歳)とのプレイセラピーを通して,離婚の子どもへの影響について考えてみたいと思います。
C子の両親は、C子が4歳の時に別居しましたが、それまでは、父から母への暴力を目撃し、怯えつつも、幼い両手を広げて母をかばい、慰めたといいます。しかし父はC子に対しては、暴力をふるうこともなく、とても可愛がってきたとのことでした。他方、母はC子に対して、厳しく、叩いて叱り、祖母から厳しすぎると注意されるほどでしたが、どうしてもやめれないと言います。
別居期間中は、母は年に数回、他県に住む父にC子を会わせに連れて行きました。しかし離婚したらもう会わす気持はないとC子にも伝えています。来談当初の母は、家族画にも、父は昔一度だけ小さく登場しただけだと誇らしげに語り、C子にとっては「母とC子と犬」のみが家族だと強調しました。しかし、母親面接者が、プレイの中で、父動物の背中に子動物を乗せて遊んでいること、父への思いがあるのでは?と訊ねると、時々「お父さんがいなくて寂しい・・・」と言うこと、また母には極力、父のことは言わないようにしているようであると涙ながらに語りました。母は実は子どもが父を求め続けていることを重々知っていたのです。
母はその後、父と母は別れること、しかし母がC子をしっかり守っていくこと、そして父とも会い続けることができることをしっかりと伝えました。
初回の箱庭で、C子はまず大蛇を箱庭いっぱいに置きつつ、「こわくて、こわくて・・・」と言います。その後に、ワニをしっぽだけかすかに見える形で砂に埋め、カンガルーがその上をピョン、ピョンと跳んでいくと、突如、ワニが姿を現し、首に噛みつき食べてしまいます。その後に、箱庭にトラとライオンを横目で睨む形で置きます。その後に、ライオンの脚を何ヶ月も動けないようにと埋め、トラの体もほどんと砂に埋め、顔をまずでスパッと包丁で切り、背中もスパッと切ります。やがて砂から抜け出したトラが砂の上を歩いて行くと罠に落ちてしまいます。その後に、20匹の牛のミニチュアを使って、暴力的な父を排除するテーマと同時に、家族崩壊のテーマ、そして両親揃った家族への羨望のテーマが見事に表現されました。
子どもは初回の箱庭で無意識に自分の置かれた状況を再現し、セラピストに伝えてくれるものです。
C子が初回の箱庭で私に伝えてきたことは、飢えた動物を使ってC子自身の「情緒的な飢え」を、そしてトラとライオンを使って、暴力の荒れ狂う攻撃的世界の恐ろしさと同時に自らの攻撃性や怒りの気持を、また牛を使って、暴力的な父を排除する一方で、家族崩壊の嘆きと両親揃った家族への羨望、そして和解幻想の気持であったように私には思えます。