親子断絶防止法制定を求める院内集会(2)

今回の院内集会で私に与えられた演題は、「子どもの連れ去りや離婚と子どもの最善の利益について」でした。

現在の裁判所の実務上の扱いでは、合意無しでの「子連れ別居」でも、監護を継続する目的でなされる場合には、合法であるとされています。そうした中で、こうした「子連れ別居」を「連れ去り」と定義して、離婚後の親子断絶の元凶として断罪していく集会が衆議院会館内で開かれた意義はとてつもなく大きいものであると思います。

今日、面会交流を巡る争いは、10年前と比べて3倍ぐらいに増えています。こうした背景には離婚後はいずれかの親のみが親権者になる「単独親権制」がまずあります。それに加えて小子化があります。家の跡取り争いから親権争いも必然的に熾烈になってくるわけです。また「イクメン」という言葉に象徴されるように、育児の単なる補助者ではなくて母親と同等ないしそれ以上に育児に積極的に関与する父親が増えてきています。その結果、一次愛着対象が父親であるといったことも稀ではなくなってきています。そうなると親権を争う父親も当然ながら増えてきます。

私は1990年から12年間、大津家庭裁判所で家事調停委員として多くの離婚調停に関わってきました。しかし当時は、このような「連れ去り」に該当するようなケースに出会うことは皆無でした。

今私は、私設の心理相談室を開設しておりますが、そこにも「連れ去り」、そしてその後の「片親疎外」の被害者からのSOSの相談がたくさん寄せられます。そしてそうしたケースはまるで判で押したように似ているのです。

以下、母親による「連れ去り」の典型的なケースを描いてみたいと思います。

父親の積極的育児参加(=父子関係良好)→夫婦間の葛藤の高まり→突然の母親による子連れ別居→居所不明→母親からの離婚調停の申し立て→父親から面会交流を求めての調停申し立て→種々の正当でない理由(「子どもが会いたがっていない」「同居中に虐待があった」「同居中にDVがあった」「父親に会うことを考えただけでストレスを高める」「PTSD状態にある」「まずは離婚してから」など)から長年会えなくなる→子どもと試行面会交流→子どもが、あからさまに父親との接触を拒否する(=片親疎外状況)→面会交流の実現が困難化する。

別居しようとする母親たちが、自分の頭で考えて、ここまで同じような行動を取るとはどうしても私には思えません。背後にはきっと弁護士のアドバイスがあるにちがいないと思っておりましたところ、実際にそのようなアドバイスを受けたという母親と出会う機会がありました。

母親Aさんによれば、「親権をとりたければ子どもを連れて姿を消さなければ無理だ」と自分の弁護士からアドバイスを受けたそうです。Aさんは、子どもが父親を愛していることはよくよくい知っていたので、深い罪の意識を感じましたが、どうしても親権を取りたかったのでアドバイスに従ったのだと言います。その後父親は、子どもの居所を探して半狂乱になって探し回ります。子どもは、父に謝って家に戻ってくれと懇願したと言います。この母親Aさんの場合には、親権を取った後、子どもへのせめてもの罪滅ぼしにと調停で決まった月2回の面会交流に子どもを送り出していますが、多くの同様のケースでは長年に渡って父子が会えなくなっているのです。