前回は、高葛藤を抱える離婚当事者間の問題を調整していく新しい職種としてのペアレンティング・コーディネ―(PC)について触れ、その役割には1)探偵的、2)教育者的、3)メンタル・ヘルス専門家的、4)裁判官的、5)子どもの代弁者的役割といった多面性があるということを述べました。今日は、それぞれについて少しだけ詳しく述べてみたいと思います。
1)探偵的役割:離婚当事者の双方と会う仕事をしている人(調停者、調査官なども)が必ず遭遇するといっても過言ではないこととして、両当事者の話が180度違うということがあります。こうした状況の中で、全体像を描きつつ、「全体的な真実」は何かを考えていく役割です。
2)教育者的役割:子どもの発達上のニーズは何か、また問題解決の仕方や子どもの他方の親との関わり方、そして人生をいかに前向きに生きていくかなどを教える役割です。
3)メンタル・ヘルス専門家的役割:離婚という出来事に対して子どもを含む当事者それぞれがどのような体験をしているのか、つまり各自がどのような内的現実を抱え持っているのかを理解していく役割です。
4)裁判官的役割:面会交流その他の監護の大枠については裁判所ですでに決定されており、PCはそれを変更することはできません。しかしその範囲内の細々した争いについては最終的にPCに決定権があり、その決定は離婚当事者に対して法的な拘束力があります。PCのこうした役割ゆえに、離婚当事者が裁判所に戻って争うことが激減したと言われています。
5)子どもの代弁者的役割:離婚当事者の争いに対してPCが最終的に決定を下す際には、その判断基準は「子どものニーズ」が最優先されることになります。
以上が米国におけるPCの5つの役割です。私は今、PC的役割をとっていくつかの離婚家族に介入しておりますが、その際に、私は裁判所によって任命されているわけではないですので、約束事が守られるためには子どもの視点に立った私の提言に心から納得してくれることにのみ頼らざるをえません。それは弱みであるとともに強みでもあると思っております。