離婚の子どもー守りの薄さと脆さ

1月25日(土)には、親子ネット主催の講演会「離婚で壊れる子どもたち」で「子どもの視点から考える面会交流」について話をしてきました。多くの方たちが来場してくれましたこと、「離婚と子ども」の問題が今、この国が抱える深刻な問題であることの証左であると思います。

また1月23日(木)には「クローズアップ現代」で離婚の問題が取り上げられましたが、まだまだ両親の離婚の狭間で苦しむ子どもたちの声は十分に世間には届いていない感じがしています。

カリフォルニア州では1980年に民法が改正され、離婚後に共同親権を選ぶことができるようになりました。法改正後の1984年に私はカリフォルニア州で離婚後の共同養育の実態調査を行い、共同養育していく上での葛藤や工夫点などを聞き取り調査しました。それをまとめたのが『「クレイマー・クレイマー」以後―別れたあとの共同子育て』(筑摩書房)でした。その後、1989年に再度カリフォルニア州を訪れて追跡調査を行いました。その際に、日本でも「離婚と子ども」に関して知名度の高いJ・ワラスティン氏宅を訪れインタビュー調査を行いました。

その際のワラスティン氏の発言で今も記憶に強く残っていることがあります。それは離別・再婚家庭の子どもに共通している点はその「脆さ」であるという指摘でした。氏がゴム人形を手にもち膝の上で何度も何度も”brittle!brittle!“と言いながら崩れ落ちさせていた姿が今も鮮明に残っています。

先日、親の離婚を3歳時に経験した教え子から悲しい知らせを受けました。兄(28歳)が自死したとの知らせでした。体に電気コードを巻き付けて感電死したとのことでした。彼はこれまでも仕事がなかなか続かず、その度に、母親の元に舞い戻ってきていたとのことでした。兄が自死したのは、母親が再婚した直後だったと言います。唯一の依存対象を失ってしまったとの思いが深い所にあったのではないかと思いました。

離婚家庭で育った子どもの脆さを象徴するような事件であると思いました。

親の離婚は子どもにとってはその拠って立つ基盤が震災のようにぐらぐらに揺さぶられるトラウマ体験であることを離婚を選ぶ親ばかりではなくて親族や司法関係者、教育者、メンタルヘルスの専門家など、当事者と関わりを持つ人たちにもっと知ってほしいと思います。

離婚後にどれだけ多くのサポートを得られるかが、いつまでも脆いままで生きていくか、脆さを克服して生きていけるかの岐路になるように思います。

離婚後に別居親との接触そして別居親の子どもの生活への積極的な関与を保証する社会システム構築は、こうしたサポートの中でも最も重要なものだと思います。「連れ去り」別居によってこうした最も貴重なサポートを子どもたちから奪ってしまっている現状を変えていくことは日本における喫緊の課題であると思います。