片親疎外ケースの理解ーダイナミズム理解の必須条件(2)=状況という文脈

退院以後、日常生活の雑務をこなす生活に戻り、すっかりブログが書けなくなっておりましたが、今日は、片親疎外ケースを理解する上で、前回は「時間軸」という文脈の大事さについて触れましたが、今回は「状況」という文脈の大事さについて触れてみようと思います。

片親疎外ケースにたくさん触れるうちに、片親疎外を引き起こしていく同居親の子どもに与える別居親に関する情報には共通する特徴があることに気づきました。

その前に、正確な情報には、誰が(Who)、どこで(Where)、なぜ(Why((あるいはどういう状況でと置き換えてもいいかと思います)、ある行動をしたかという3Wが欠かせません。ところが、片親疎外を引き起こす親の情報には、3つめのWhyが欠けているか、あるいは事実とは異なる理由、状況が付加されているのです。

具体例をあげますと、「お父さんは私にすごい剣幕で怒ったのよ。すごく恐かったわ。」あるいは、「お父さんは家で突然、理由もなく、すごい剣幕で怒ったのよ。すごく恐かったわ。」と子どもに伝えまず。

しかし、なぜ怒ったのか、どういう状況で怒ったのかという文脈を入れて情報を書き換えますと、こういうことであるかもしれません。「父は母の浮気を知って、母にすごい剣幕で怒った。」あるいは「父は、我慢に我慢を重ねてきたが、母のあまりにも父をないがしろにする言葉についに怒りが爆発し、すごい剣幕で怒ってしまった。」などなど、いろいろな場合が考えられるでしょう。

子どもはこうした同居親による情報操作に気づかないし、そもそも,愛する親がこのような情報操作をしているなどとは夢にも疑わないわけです。しかし、子どもの中にはうすうす自分が情報コントロールされていることに気づき始め、「全てのことが知りたい・・・」などと発言する子どももいます。

心理学の分野には「表情分析」という分野があります。その中で、人は「状況」という文脈を抜かれて表情だけを見せられるとなかなか正確に判断できないけれども、「状況」という文脈を入れるとほぼ誰でも正確に表情を判断できるということが指摘されています。

離婚後に別居親が子どもとの接点を失うまいとあらゆる努力をしていることに対して「子どもにつきまとう」という風に誤った文脈を刷り込まれている子どもは、運動会で子どもの姿を見て思わず嬉しくて「微笑む」父を見て、「気持ち悪い」と感じてしまうのです。

このように「歪んだ認知」をもたれてしまった父親が、短時間の面会交流の中でその不信感、歪んだ認知を修正することは至難の技です。ましてや裁判所が言うように、手紙等の間接的な手段によって修正することは不可能であるといえます。