プレイセラピーを通して見えてくる離婚の子どもへの影響(2)ー自責の念と無力感

今日はB男(5歳)とのプレイセラピーを通して、離婚の子どもへの影響について考えてみたいと思います。

私の所に母親に連れられて来談した時、B男は5歳でした。まだ幼さが残るとても愛くるしい男の子でした。B男が4歳の時に両親が離婚しており、A男と違い、その後、大体、月2回は宿泊つきで別れ住む父親との面会交流が行われてきました。その意味では、A男と違い、B男は幸いにも離婚後も片親を失ってしまうということはなかったわけです。しかし、この面会交流を巡って両親間に争いが続き、その狭間に立たされ続けたB男はそのストレスからさまざまな症状を示すようになりました。5歳という発達年齢であることも影響して、親の離婚は自分が十分に良い子でなかったからでは?との自責の念が強くなり、めそめそ泣いたり、腹痛・頭痛を訴え、外で元気よく遊べなくなり、登園をも渋るようになったのです。

B男は初回から箱庭に興味を示しました。そしてその後も毎回、箱庭での象徴的なプレイを続けました。

多くの子どもたちと出会ってきての印象ですが、初回の箱庭は、その子がその時点で抱える問題やテーマが無意識のうちに表現されており、その意味では非常に重要であると思います。A男の場合には、箱庭は初回においてのみ使われました。

B男は初回の箱庭で、シルバニア・ハウスとそこに住むウサギの家族を箱庭の中に入れ、屋根の上に積み木を高く積み上げました。何とも見ていて不安定な印象です。その後に箱庭の動物や鳥、魚、は虫類などのミニチュアを鷲づかみにして乱雑に投げ込みました。出来上がった箱庭から受けた印象は「不安定さ」と「混乱」でした。そして、このような世界こそが、離婚後にB男が置かれた世界の箱庭に表現された「象徴的世界」であると私は思いました。

その後も毎回、箱庭遊びが続きましたが、そこに必ず登場するのがシルバニア・ハウスに平和に暮らしている「ウサギ・ファミリー」と「毒ヘビ」「ワシ」「シャチ」「怪獣」といった悪者たちでした。そして、最後には、「ウサギ・ファミリー」が、家もろとも悪者たちによって破壊し尽くされてしまうという見るも無残な光景でした。

「平和な家庭が破壊される」というテーマが、毎回、執拗に、全身全霊を注いで真剣に繰り返される光景を目の当たりにして、この「平和な家庭が破壊される」という体験が、B男にとって、いかに深刻なトラウマ体験であったか、そして今、箱庭という表現の場を得た彼がそのトラウマ体験を箱庭の中に象徴的に自ら再演することによって、その「無力感」を無意識裡に克服しようと頑張っているのだと思うと「頑張れ!」と心の中で叫ばずにはおれませんでした。